えんため日記。

エンタメだいすきなTV番組制作員(末端)。 日々触れたエンタメの感想を綴る。

【観劇】1/30 14:00 ハイバイ『夫婦』

理不尽に自身の偉さ、地位、権力を家庭内に振りかざし、刃向う妻・子供たちを徹底的に支配・征服する父親…というのが、自身の体験にリンクして心が痛かった。けど一番感情移入してしまったのは、同じ境遇だったはずの子供たちではなく“父親”だったから不思議だ。
父の葬儀で、職場など外面では人格者として慕われていたことを知り、驚く家族たち。
家族の前では素直になれない・・・そんな父の悲哀にどうしても感情移入してしまう。
家庭内で権力を振りかざし、母・私・弟を力づくで支配してきた父に育てられた自分が、この舞台で岩井父に感情移入してしまうのは、自分の父の悲哀にも本当は気づいてるからなんだよな。。

自分も殴られて育ってきたから、だから自分も殴って教育するんだ、という父。
自分が殴って育てられたからといって、自分の殴って教育するのは違う、という母。
誰に養ってもらってると思ってるんだ!出ていけ!と怒鳴る父。
絶対出ていくか!!養え!と返す息子。
私はそれを言えなかったなあ…
「誰のおかげでお前は生きていけると思ってるんだ」って言われることが本当に悔しかった。悔しいけどあなたがいなけりゃ私は存在していない訳で。ご飯も食べれないし学校にも行けない。悔しいけどそれがわかってるから刃向えない。最初から生むなよ、生まれてこなけりゃよかった、って何度も悔しくて泣いた。けどそれすら本人には言えなかったなあ。。

 

私は自分の家庭環境が特別に変わったものではないとは思っていたけど、twitterなどでこの舞台の感想を見ると、「自身の家庭を思い出し涙した」という感想が圧倒的に多くて驚く。ああいう父親像っていうのは、戦後日本のスタンダードなのかなあ。父親ってのは切ない存在だ。
愛ゆえに、とどこかで理解しているからこそいま悲しくなるんだろう。

なんだか色んなことを思い出したし、誰の感情も理解出来るし、こうやってあらすじだけ書くとすんげー暗い話やけども…いっぱい笑ったし、心を突き動かされる舞台だった。


何より、山内圭哉さんっていうデカい男の人が母役を演じてることがもう正解過ぎるよなあ。、

ただただ上手な女優さんが演じていたら、どうしても暗い印象が残りそうだし、夫婦のシーンが生々しくなりすぎていただろう。
見終わってから山内さんがあさが来たの雁助さんだったということを知り。
器用な役者さんだなあ。

 

ハイバイの舞台は初めて見たけど、素直にまた見たいと思いました。
自身の自伝的内容をこんな風に舞台にした岩井秀人さんは、ほかにどんなホンを書くのだろう。